くっさーーぁ
私が屁をこくと、妻がそう言いよる。
そんなことを言うのは、妻だけだ。
みんな「いいのが出た、ドンドン出してや」と言ってくれるのに。
腹が張って、無茶苦茶しんどい。
ガスが溜まっているのに、出ない。
あと少しのところで、腸に戻ってしまう。
腹筋がないのか、自力で出すのが難しい。
排便前に、ヘルパーが腹をマッサージして、ガスを肛門へと追い出す。
腹を押し続けると、
ぶ・ぶ・ぶリぶリリリリリリリリリリリーー
( 下品で、申し訳ございまへん )
何度も繰り返し出る。
笑えるほどにだ。
腹が一気にしぼむ。
どんだけ溜まっていたんや。
訪問医から、呑気症(どんきしょう)という言葉を聞いたことがある。
へーぇ、そんな病気があるんか。
呑気症とは、
空気嚥下症ともいって、大量の空気を呑み込むことによって、胃や食道、腸に空気がたまり、腸に流れた空気は、最終的にオナラとして体外に出す、と書いてあった。
どうやら、呑気症のようだ。
呼吸器を付けてから、嗅覚がなくなった。
アロマの匂いも、入浴剤の匂いも、💩便臭も分からない。
当然、自分の屁の臭いも分からない。
それだけに、気になる。
体を動かすと、屁が出やすい。
動かしている最中に、出てしまう。
「ごめん」また屁をかましてしまった。
妻は、私の屁を臭いと言う。
毎日、同量の栄養とクスリしか注入していないのに…
「奥さんだから言えるんですよ」ヘルパーが言ってくれる。
人前で、へー気で屁はこけるほど、豪傑ではない。
やっぱり、抵抗はある。
これからも、我慢せずに出させてもらう。
病気だと思って、私の屁と付き合ってもらいたい。
さて、今回「おなら」か「屁」か、言葉に迷った。
どちらも辞書に "肛門から放出する空気” とある。
おならの方が、上品に聞こえるが、身近な「屁」を使うことにした。
屁の漢字はあるが、おならの漢字はない。
屁理屈、屁垂れ、屁の突っ張り、屁の河童、屁でもない、屁っ放り腰など、
普段から馴染みがある表現だ。
「達磨さんが転んだ」の遊びをご存じだろう。
1人の鬼と子に別れ、鬼が後ろを向いて「だるまさんが ころんだ」と言う間に、子が親に近づく遊びだ。
私の世代と地域では、「ぼんさんが 屁をこいた」と言う。
そのあとに「たいへんに くさかった」と続き20字になる。
昔から「屁」と「臭い」は切り離せない関係なのだ。