どうする ALS  

         59歳でALSと診断された。定年退職まで、あと8ヶ月の頃だった。 ALSとともに4年目に入った。 その間に呼吸器が付き、手足が動かなくなった。 これからどうするのか…  日々の感情や考えを綴っていきたい。

13話 笑える入浴

週2回、入浴サービスが来てくれる。

ベットの横に浴槽を組み立て設置する。
呼吸器が幅を取り、部屋の引き戸と浴槽の間が狭い

最近、同じスタッフが来る。
2◯歳のT看護婦、50歳手前の女性ヘルパーCさん、70歳の浴槽係の男性N氏
三世代の年齢の差だ。

ヘルパーのCさんは、以前 "ドラえもんでーす” と自己紹介してくれた。

確かに、本人が言う通り小太りで手足の短い体形は、その通りだ。

最近、ある動物に例えられて揶揄される。

しかし、その揶揄を逆手に取って、可笑しい話に持っていく。もはやプロの域だ。
ダジャレ好きで、話が止まらない。何を言っても笑えてしまう。

愛されキャラのある動物 似ている

一挙豚一豚足?(一挙手一投足) の動きも滑稽だ。
狭いところは、大の字に貼り付き、横歩きですり抜ける。
まるで、ブタイダー?? オッと失礼、スパイダーマン(ウーマン)のようだ。


N氏は、細身で年の割に身長が高い。
話し上手とは思えない。ボソッと呟く言葉にCさんが反応する。
どちらが、ボケでツッコミか。
嚙み合わない、掛け合いが始まる


N氏とCさん、ノッポとちびっ子の「でこぼこコンビ」は、まさに夫婦漫才
すぐに舞台に立てるポテンシャルがある。


ところで、一番後輩のT看護師。
「私を一緒にしないで」と思っていないか?
いやいやどうして、しっかり二人に絡んでいるし、いじってるぞー。
見事な仕切りっぷりである。

コンビではなく、明らかにトリオだ。
三人の絶妙な掛け合いが、利用者を和ませてくれる。

日本一の笑える入浴サービスだ

♪ウララ・ウララ・ウラ・ウラでの出囃子 三人で舞台に立つのも遠くはない


小ネタの紹介
T看護師が聞く「Cさんはピアノ弾けるの?」
Cさんが答える「うん。ひもがあったら引ける」

意味が分からない。 

解説すると、
演奏はできないが、ひもで括ればピアノを引ける、ってことだ。

ピアノを引っ張るCさん、頭から離れない。
思い出しては、にやけている。
 

12話 vs 訪問介護事業所

利用者と訪問介護事業所、どちらが優越的立場にあるか。


断然、訪問介護事業所だ。
ヘルパーの需要が多いから、強気だ。

パワーバランス 事業所が強い

利用者とヘルパー。人と人の関係
どうしても、合わない場合がある。( お互いに)
生理的に合わない。
感覚や考えが合わない。
支援が合わない、等々。


「あの人はちょっと…」と言うと、
「そんなことを言ってたら、支援に入るヘルパーがいなくなる。困るのはご自身ですよ」
事業所幹部から言われた言葉だ。

脅しなのか?


利用者は、ヘルパーを選べない。
事業所の都合が優先される。
従わざる負えない 人質に取られているのも同然だ。


私の偏見だが、
口うるさく、利益の薄い利用者は、
好まれない。

そんな利用者を黙らせる、常套句がある。「撤退しますよ」


訪問介護事業所は、増えている。
何故か。
 儲けが見込めるからだ。


「世のため、人のため、社会に貢献し、弱者に寄り添う」そんな、崇高な理念を掲げて起業した事業所が、どれほどあるだろう。

事業所は、ボランティア団体ではない。
利益を追求することは、至極当然。
しかし、その仕事は、人の安全と安心、健康と命を預かっている。
強く自覚すべきだ。


いずれにしても、事業所が増えることは良いことだ。
利用者の選択肢が増える。


事業所を選択する上で、訪問介護事業所の評価・クチコミサイトが見つからない。
施設に関してはあるのに…
是非とも評価・クチコミサイトを作って欲しい。


あれれ…、俺は何を言いたいのか… 支離滅裂だ。
要は、介護の質の向上と自覚、そして、利用者と事業所は対等である、
と言いたいのだ。

対等であるべきだ!

皆さんは、どう思いますか。

今のところ良好な関係にあるが、
投稿後に、全事業所が撤退らどうでしょうか。
やばいな。
 

11話 治験

6月13日付朝刊に、ALSの治験の記事が載った。

京都大学IPS細胞研究所は、白血病治療薬(ボスチニブ)が、進行を一定抑制すると確認した、という内容だ。


この治験が始まることは、知っていた。

参加したい。
病院のA先生に伝えた。

A先生は、新聞に記載のある井上先生に、直接連絡してくれた。
しかし、私は治験対象条件より、進行していた。

もう半年、治験が早く始まっていれば、
もう半年、発症が遅ければ、

治験に参加できたかも知れない。

運がない。
生まれ持った運に、逆らえないものか。

そう言えば、金運もなかった。
宝くじも、当たったことがない。

話を戻すが、
今回の治験では、進行を抑制する効果が確認された。
進行を止める効果が、確認された訳ではない。

意地悪く考えれば、進行を遅らせる分、闘病を長引かせる。
疾患者からすると、抑制だけでは物足りない。


ALSは、運動神経細胞が死滅する進行性の神経変性疾患だ。
ならば、死滅する神経細胞に、IPSで正常細胞を培養し、移植できないだろうか。

何も分かってない素人が、と叱られそうだ。

少しでも快方に向かいたい。
いや、根治したい。

このままだと、どうなるのか、不安が高まる。

神経が死滅する病気なのに、神経質になってしまう。

皮肉なものだ。
 
www.kyoto-np.co.jp
 

10話 回顧録6 : 看多機

車椅子生活に備えて、リフォームをすることにした。

主要な柱だけを残し、屋根も壁もすべて取り払う。
今流行のケルトンリフォームだ。

完成するまで、近くの賃貸マンションに移った。
室内は段差がなく、車椅子でも動きやすい。
ところが、トイレと浴室が狭い。介助者が一緒に入れない。


入浴は、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に通うことにした。
週2回スタッフが迎えにくる。裏の出入口まで車椅子で行く。
送迎車に乗るためには、3段の階段を降りなければいけない。


車椅子から立ち上がり、片手で手すり、もう片方で杖を突く。
スタッフにズボンの後ろを持たれ、階段を降りる。
怖い!
毎回、階段の昇降が怖かった。

俺を苦しめた、憎っくき階段

そこで、自作の「介助用腰ベルト」を考案した。
介助者もしっかり持てる。私も ”守られている感” を得られる。装着感も良い。
外出時には必ず装着した。
【腰ベルトを装着した動画作成を計画中】



さて、看多機の利用者は、私以外、60-70歳代はいない
80-90歳代の大先輩ばかりだ。

若僧が先輩方をかき分け、車椅子で奥に進む。
申し訳なく、気恥ずかしい。

風呂前にY看護婦がバイタルを測る。
毎回、私の坊主頭を見て ”毛が生えてますよ” といじる
成長が遅いだけ”と返す。

入浴後は、言葉の訓練。
表情筋を使って、目を大きく開いて
言わるまま誇張して、言葉を発する。
その表情を見て、Y看護婦がケラケラと笑う。
完全に遊ばれている。だが、そんな時間が楽しい。

お気に入りの看護師だ。

リフォームは12月下旬に完成する。ここへ来るのも、あと1ヶ月ほどだ。

ところが、突然行けなくなった。
入院したからだ。
その入院が、私の状態を大きく変えることになる。

>

取ったぞー 
介助用腰ベルトで登録

9話 おいかん

タイトルの「おいかん」は何か、分かりますか。

ヒントは8話「浣腸の日」にある。
???…

浣腸液を注入したが、便の出が悪い。
そんな時に、追加で浣腸液を入れる。

2週間分の浣腸

何気に発した(クチパク)言葉だ。

最初は、看護師も補助のヘルパーも、何のことか分からない。
「おいかん」とは”追い浣腸”のことだ。

今では、私の「チーム K 」の看護師には「おいかん(追浣)」の言葉が浸透している。
なかなか、良い語呂だと思う。


Web検索で「おいかん」を調べた。
ヒットしない。
やおいかん」が多かった。
熊本弁で「簡単ではない」という意味らしい。

排便も簡単ではない。当たらずも遠からず、と思えた。


「きせつ」も調べた。
気管切開のことが、ずらりと並ぶ。
医療従事者なら、当たり前の言葉だが、最初は誰かが言ったはずだ。


「おいかん」は、今のところ新語なのか?
クチコミで広がり、業界用語になる日が来るかもしれない。

皆さんの発信で、流行語大賞を目指そう! なーんて?
そんな、阿保なことを考えていると気も晴れる。


話を変えるが、
食事を取ると、便が出る。どちらも大事なことだ。
それなのに、”うんち”のイメージが悪い。
”うんち”にスポットを当てたWebサイトがあった。

うんちサイト

https://toilet-magazine.jp/unchiweek
 
 

8話 浣腸の日

今回は「うんち」の話だ。
汚い話だが、ご勘べんいただきたい。
そして、医療従事者にも知って欲しい。

寝ながらの排便は難しい。
寝たきりになると、腹筋が弱くなり、力めない。

私は週3回、浣腸と摘便で排便をコントロールしている。

便が直腸に降りているか、看護師が指で探る。
浣腸は60ml、6割ほど注入する。そして直腸に追い出すように腹をソフトマッサージ。
ベットを少しギャッチアップする。重力も味方に付け、力む。

この間は、胃瘻の洗浄も、気切のガーゼ交換も、されたくない。
便に出すことに集中したいし、して欲しい。

「出そうや」ヘルパーに拳で、強く長く押してもらう。
便が肛門を通過した時は、気持ち良くほっとする。
だが、出ない時は、がっかりだ。

側臥位になって摘便が始まる。慣れたのか、痛くない。
指の動きは分かる。しかし、便が出ているか、どんな便なのか、まったく分からない。
摘便とは、そんな感じだ。(私の場合だが…)

残便感があれば、追加浣腸を行う。また同じ処置を繰り返す。

観賞したいカンチョウジ(管丁字)の綺麗な花、(ブバルディア)

浣腸の日は、朝から憂鬱だ。

処置が嫌なのではない。今日はしっかり出せるのか? それが心配なのだ。
便が出ないのは、本当に辛い。


ところで、1月19日が「浣腸の日」って、ご存知でしたか。
イチジク製薬が制定したんだって。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/303734?rct=what_day








 
 

7話 回顧録5 : 最後の旅行

ラジカット治療の1クール目が終わり、退院した。

家族で温泉に行きたい。前から願っていたことだ。
7月中旬、他県への人流制限が緩和された。
8月は長男の嫁が、二人目の子を出産する。

この機会を逃したら、もう行けない。

呼吸器を積み込み、携帯酸素を持って出発した。
長男家族と二男と、福井市内で合流し宿に向かった。

まずまずの和風旅館だ。
車椅子を持ち込むと、事前に伝えている。
部屋は庭に面する1階で、二部屋とも広かった。
一室には、酸素濃縮器も届いていた。業者が届けてくれている。

女将が挨拶に来た。
還暦の家族旅行と伝えた。

夕方、早めに風呂へ行くことにした。幼い孫が車椅子を押してくれている。

ボクが押す―!  ◯◯た、ガンバレ❕

久し振りの大浴場。長男と二男に抱えられて、湯船に浸かる。
大きい風呂は気持ちがいい。だが、肩までは浸かれない。
水圧で胸が圧迫され、呼吸が苦しくなるからだ。

夕食はテーブル席の個室だ。
奮発したのか、豪華な料理がテーブルに並ぶ。
そして、還暦のお決まりの衣装、赤いちゃんちゃんこと帽子が用意されていた。
旅館の気配りがありがたい。

みんなで記念撮影

仲居さんを見てー はいチーズ! パシャ

孫が主役?の楽しい時間を過ごした。
もう、こんなに楽しい旅行は、二度とできないだろう。
悲しい、辛い、悔しい。

写真を見ながら、ブログを編集している。
感情が込み上げてくる。涙が止まらない。 涙… 涙… 涙…

一泊二日の小旅行、来られて良かったが、淋しさを感じた。

楽を覚えて、すぐに車椅子に乗ってくる ◯◯た

今回の宿代、ぜーんぶ、俺持ちか?(笑)

後日、息子たちが、まっさらの還暦衣装を用意して、祝いの席を設けてくれた。


文中の業者とは、フクダライフテック(フクダ電子)
酸素濃縮装置を近隣の営業所から、宿泊先に届けてくれるサービスがある。

フクダ電子 酸素濃縮装置
<ラジカット治療の1クール目を終え、退院した。