どうする ALS  

         59歳でALSと診断された。定年退職まで、あと8ヶ月の頃だった。 ALSとともに4年目に入った。 その間に呼吸器が付き、手足が動かなくなった。 これからどうするのか…  日々の感情や考えを綴っていきたい。

7話 回顧録5 : 最後の旅行

ラジカット治療の1クール目が終わり、退院した。

家族で温泉に行きたい。前から願っていたことだ。
7月中旬、他県への人流制限が緩和された。
8月は長男の嫁が、二人目の子を出産する。

この機会を逃したら、もう行けない。

呼吸器を積み込み、携帯酸素を持って出発した。
長男家族と二男と、福井市内で合流し宿に向かった。

まずまずの和風旅館だ。
車椅子を持ち込むと、事前に伝えている。
部屋は庭に面する1階で、二部屋とも広かった。
一室には、酸素濃縮器も届いていた。業者が届けてくれている。

女将が挨拶に来た。
還暦の家族旅行と伝えた。

夕方、早めに風呂へ行くことにした。幼い孫が車椅子を押してくれている。

ボクが押す―!  ◯◯た、ガンバレ❕

久し振りの大浴場。長男と二男に抱えられて、湯船に浸かる。
大きい風呂は気持ちがいい。だが、肩までは浸かれない。
水圧で胸が圧迫され、呼吸が苦しくなるからだ。

夕食はテーブル席の個室だ。
奮発したのか、豪華な料理がテーブルに並ぶ。
そして、還暦のお決まりの衣装、赤いちゃんちゃんこと帽子が用意されていた。
旅館の気配りがありがたい。

みんなで記念撮影

仲居さんを見てー はいチーズ! パシャ

孫が主役?の楽しい時間を過ごした。
もう、こんなに楽しい旅行は、二度とできないだろう。
悲しい、辛い、悔しい。

写真を見ながら、ブログを編集している。
感情が込み上げてくる。涙が止まらない。 涙… 涙… 涙…

一泊二日の小旅行、来られて良かったが、淋しさを感じた。

楽を覚えて、すぐに車椅子に乗ってくる ◯◯た

今回の宿代、ぜーんぶ、俺持ちか?(笑)

後日、息子たちが、まっさらの還暦衣装を用意して、祝いの席を設けてくれた。


文中の業者とは、フクダライフテック(フクダ電子)
酸素濃縮装置を近隣の営業所から、宿泊先に届けてくれるサービスがある。

フクダ電子 酸素濃縮装置
<ラジカット治療の1クール目を終え、退院した。