年が明け2022年1月、病院主治医A先生が「6月の定年退職まで頑張ろう」と目標を立てた。
バス停まで僅か100m足らず、何度も立ち止まり、マスクを外し呼吸を整える。そんな通勤が続いた。
杖を突かないと歩けなくなった。
遂には、自宅から会社までタクシーで通った。(帰りは妻の迎え)
正面入口に着けても、所属部(南端)まで、自力で辿り着くしかない。
仕事面では、随分と部員が助けてくれた。
しかし、トイレは代わりを頼めない。片手で杖を突き、もう片方でズボンのベルトを押さえて歩いた。尻の肉が落ち、ベルトを押さえないとズボンがスルリと脱げ落ちる。
焦りながらの不安定な歩行、いつ転んでもおかしくない。
辛かった。
大過なく勤めてきたサラリーマン人生。定年を目前にして「小便たれはった」の汚点は残したくない。
パンツタイプのおむつを履き、粗相しないよう必死だった。このような状態いつまで続けるのか…
「もう無理ちゃうか」誰かに止めて欲しかった。
5月下旬、主治医に「先生、もうあかん」と弱音を吐いた。
「よく頑張った、頑張り過ぎは進行を早める」と診断書を書いてくれた。
翌日が最後の出社になった。病室が空き次第入院することにした。
部員には迷惑を掛けてしまった。すまない気持ちで一杯だった。