どうする ALS  

         59歳でALSと診断された。定年退職まで、あと8ヶ月の頃だった。 ALSとともに4年目に入った。 その間に呼吸器が付き、手足が動かなくなった。 これからどうするのか…  日々の感情や考えを綴っていきたい。

6話 回顧録4: 病院で還暦

ラジカット治療で入院をした。
満60歳になる月だ。
60年で一度の還暦の夕食は、一人ぼっちの病院食。
家で迎えていたら、普段より豪華だったと思う (実際は?だが) 

でもしかたない。いつも通り美味しくいただいた。調理員さん、ご馳走様でした。


還暦月は定年退職月でもある。

入院しなければ、末日に役員フロアの貴賓室で、社長から辞令を受ける。
長年勤めた労いの言葉もあっただろう。(先輩に話では)

同僚が言った「30分ほど病院を出て来れないか」

サラリーマンには大きな節目だ。交付式に出席したいのは山々だ。
しかし、コロナ禍が出席を阻んだ。


後日、妻が会社を訪れた。
定年退職の辞令は、異動や昇進の辞令とは異なるものだった。

最後の辞令

二つ折りの台紙に、辞令と感謝状が添えてあった。
記念品もあった。

それを、誇らしく見つめた。そして淋しさもあった。

お世話になった皆様に、挨拶できず去ってしまったことが悔やまれた。